2025年4月10日(日本時間11日)に公開された ESXi 8.0 U3e (P05) のリリースノートに、vSphere Hypervisor (無償版の ESXi)の提供再開が追記されました。
Broadcom makes available the VMware vSphere Hypervisor version 8, an entry-level hypervisor. You can download it free of charge from the Broadcom Support portal (https://support.broadcom.com/group/ecx/free-downloads).
※ 4/15 追記 : KB の説明に若干の追記があったので以下参照
Broadcom makes available the VMware vSphere Hypervisor version 8, an entry-level hypervisor.
No Broadcom support is available for this offering and it is for non-production use. vSphere Hypervisor cannot connect to vCenter and therefore cannot be centrally managed.
You can remotely manage individual vSphere Hypervisor hosts by using the VMware Host Client. vSphere Hypervisor supports a maximum of 8 virtual CPUs per virtual machine.
You can download it free of charge from the Broadcom Support portal (https://support.broadcom.com/group/ecx/free-downloads).
※ 元々 vSphere Hypervisor の提供は Broadcom による VMware の買収完了後に提供が終了となっていましたが、改めて提供方法を変更して再開されました。
- End Of General Availability
of the free vSphere Hypervisor (ESXi 7.x and
8.x)
https://knowledge.broadcom.com/external/article/345098/ - VMware End Of Availability of Perpetual Licensing and SaaS
Services
https://blogs.vmware.com/cloud-foundation/2024/01/22/vmware-end-of-availability-of-perpetual-licensing-and-saas-services/
本投稿では再開された vSphere Hypervisor のバイナリの入手方法、通常版の ESXi との違い、従来の vSphere Hypervisor との違いなどを解説します。
本投稿の内容
- vSphere Hypervisor (無償版の ESXi) の入手方法
- vSphere Hypervisor (無償版の ESXi) の ISO を利用したバージョンアップ時の操作、注意点
- ESXi 8.0.x (ライセンス適用済み) に無償版 ESXi 8.0U3e を適用してみる
- ESXi 7.0.x (ライセンス適用済み) に無償版 ESXi 8.0U3e を適用してみる
- ESXi 6.7.x (ライセンス適用済み) に無償版 ESXi 8.0U3e を適用してみる
- vSphere Hypervisor (無償版の ESXi) の機能制限、利用規約
vSphere Hypervisor (無償版の ESXi) の入手方法
前回の投稿「2025年3月以降の vSphere ESXi ・ vCenter のパッチダウンロードとアップデート方法」の冒頭で記しましたが、2025年2月末の Broadcom サポートポータルのソフトウェアの配布方法の変更により、有効なサブスクリプションを持つユーザーがダウンロードできるソフトウェアと、フリーで提供されるソフトウェアのダウンロードが明確に分けられました。
昨年末に無償化された VMware Workstation Pro や Fusion Pro はフリーで提供されるソフトウェアに分類されていましたが、今回の vSphere Hypervisor も同様のカテゴリにて配布されます。
Broadcom サポートポータルのアカウントが未作成の場合は作成してください。Gmail などフリーメールアドレスを利用したアカウントの場合も、今回の vSphere Hypervisor や VMware Workstation Pro など無償化された製品はダウンロードできます。
Broadcom サポートポータルの「My Download」を開くと、従来はサブスクリプションのエンタイトルメントを持たないアカウントでも全製品の一覧が表示されましたが、2025年3月以降は非表示となります。
Free Software Downloads available HERE のリンクをクリックし、https://support.broadcom.com/group/ecx/free-downloads を開きます。
VMware 以外のソフトウェア製品も表示されるのでフィルタする場合は Division 欄で VMware のチェックを入れるか、
Product Name を "VMware" などで絞り込んでください。 Workstation Pro や Fusion Pro に並んで、下の方に "VMware vSphere Hypervisor" がリストされます。
※ 今回、併せて "VMware vSphere ESXi Drivers" も追加されました。
2025年4月11日時点では Release Note にある通り、ESXi 8.0U3e (P05) のみが表示されています。
再公開された vSphere Hypervisor のダウンロードは ISO イメージのインストーラファイルのみが公開されており、オフラインバンドル (オフラインデポ)の Zip ファイルは無いようです。
ダウンロード直リンク
右側の雲のアイコンをクリックしてダウンロードできます(初めてダウンロードするときは "I agree to theTerms and Conditions" のチェックボックスが表示されるのでエンドユーザー規約を確認の上、チェックを入れてください)。
アカウントに住所設定がされていない場合、製品輸出入規制の制約に関連して、アカウントに国、住所などの連絡先が設定されてる必要があるためメッセージが表示されます。画面に沿って必要事項を入力してください。
"I agree to theTerms and Conditions" を以前にチェックしている場合はそのままダウンロードできるはずです。
ここでダウンロード可能な vSphere Hypervisor の Build 番号は、Release Note に書かれている 24674464 と異なり、24677879 と表示されています。この違いについては後述します。
ISO イメージがダウンロードできたら、今まで通りインストーラとして初期セットアップに利用したり、既存の vSphere Hypervisor のバージョンアップに利用できます。
通常版の ESXi と vSphere Hypervisor は何が違うのか?
落とした ISO を比べてみると無償版の vSphere Hypervisor のほうが Build No が大きく、ファイルサイズも僅かに大きい。
- (通常版) VMware-VMvisor-Installer-8.0U3e-24674464.x86_64.iso 648341504
- (無償版) VMware-VMvisor-Installer-8.0U3e-24677879.x86_64.iso 648374272
通常版の ESXi 8.0 U3e は Build No 24674464 でファイルサイズは 648,341,504 Byte、無償版の vSphere Hypervisor ESXi 8.0 U3e は Build No 24677879 でファイルサイズは 648,374,272 Byte。
Metadata 内の BaseImage のコンフィグを見比べるとコアパッケージと一部のドライバ周りで9個ほどそれぞれの Build No のものがありますが、基本的には同一のようです。
イメージプロファイルも同じように Build No 入りで別のプロファイルです。
- ESXi-8.0U3e-24677879-standard
- ESXi-8.0U3e-24677879-standard
vSphere Hypervisor (無償版の ESXi) のライセンス状態
無償版 ESXi 8.0U3e は新規インストールすると無期限の vSpehre Hypervisor ライセンスが適用された状態で起動します。
機能は従来の vSphere Hypervisor と同じく、8 vCPU までの VM をサポートする制限がかかっています。当然、vCenter Server 配下iに登録することなどはできず、Standalone での利用が前提です。
※ ライセンスキーは無償版とはいえ直接公開するのはよろしく無いので各自で確認してください。
デフォルトで入っている vSphere Hypervisor ライセンスキーを削除すると、期限切れの状態となり、仮想マシンの作成・起動含めた操作ができなくなります。
新規インストールした際の 60日評価モードは利用できないので、それらが必要な場合は通常版のインストーラを利用します。
再度、vSphere Hypervisor のライセンスキーを当て直したり、別の商用ライセンスキーを適用することは可能です。
vSphere Standard や vSphere Foundation などのライセンスキーを適用すれば通常の ESXi と同じく vCenter Server に組み込めます(商用ライセンスキーの適用はサポートされる構成です)
ちゃんと機能も限定解除されます。
Build No、イメージプロファイルが通常版とは異なりますが、今後パッチを適用する際にプロファイルを更新することで Build No も通常版と同じになります。
vSphere Hypervisor (無償版の ESXi) の ISO を利用したバージョンアップ時の操作、注意点
再公開された vSphere Hypervisor (無償版の ESXi) は ISO イメージのインストーラのみで、Zip のオフラインバンドルはありません。
既存で利用している vSphere Hypervisor をバージョンアップする際には ISO をマウントしてホストの再起動からアップデートを適用する方法で対応します。
※ ISO インストーラのみの提供なので、個別のドライバ VIB などをインストールしている既存環境の場合、バージョンアップができない場合があります。
ESXi 8.0.x (ライセンス適用済み) に無償版 ESXi 8.0U3e を適用してみる
ライセンスが適用された ESXi 8.0.x、または 60日評価モード期間中の ESXi 8.0.x に無償版 ESXi 8.0U3e を適用した場合、元のライセンスキー、または評価モード状態が維持されます。
試しに ESXi 8.0U3 (ESXi-8.0U3-24022510-standard) に vSphere Foundation のライセンスを当てて無償版 ESXi の ISO でバージョンアップしてみます。
60日評価モードの ESXi 8.0U3
VVF ライセンス適用後の ESXi 8.0 U3
無償版 ESXi 8.0U3e の ISO イメージをマウントして再起動、アップグレードを実行
バージョンアップを実行後のイメージプロファイルは ESXi-8.0U3e-24677879-standard に更新されています。
バージョンアップ前に適用したライセンスは維持されます。
なお、60日評価モードを利用している ESXi をバージョンアップした際は評価モードの残日数が引き継がれます。
ESXi 7.0.x (ライセンス適用済み) に無償版 ESXi 8.0U3e を適用してみる
ESXi 7.0.x に vSphere Hypervisor ライセンスを適用した状態で無償版 ESXi 8.0U3e の ISO イメージを利用してバージョンアップしてみます。
ISO からバージョンアップします。
メジャーバージョンアップ完了後、イメージプロファイルは ESXi-8.0U3e-24677879-standard に更新されています。
ESXi 7.0.x のラインセンスは ESXi 8.0.x では利用できないので 60日評価モードで起動します。これは元々の通常版 ESXi でのメジャーバージョンアップ時の挙動です。
vSphere Hypervisor のライセンスが適用された状態では起動しないので要注意。 無償版 ESXi 8.0U3e の vSphere Hypervisor ライセンスキーが必要な場合は、空き PC や Nested ESXi 上にインストールして、ライセンスキーをコピーしておいてください。
60日評価モード状態で vSphere Hypervisor で利用できること以上の設定を行うと、vSphere Hypervisor ライセンスキーの適用ができないので注意してください。キーを当てる場合は当該機能の設定を初期値に戻す必要があります。
ESXi 6.7.x (ライセンス適用済み) に無償版 ESXi 8.0U3e を適用してみる
ESXi 6.7.x からのバージョンアップも ESXi 7.0.x のときと同様です。
ESXi 6.7 以前と ESXi 7.0.x 以上では ESXi 起動領域のパーティションレイアウトが異なるため、アップグレード時のメッセージが異なります。
再起動後、ESXi 8.0U3e は評価モードで起動します。vSphere Hypervisor ライセンスキーが必要な場合は前述した通り、別途新規でインストールした環境からキーをコピーします。
vSphere Hypervisor (無償版の ESXi) の機能制限、利用規約
機能制限
vSphere Hypervisor の機能制限は従来通りで、Standalone で動く前提のため vCenter Server への接続はできず、vCenter Server が提供する機能 (Clone、vMotion、HA など) は利用できません。
仮想マシンの作成 (1VM 辺り 8 vCPU まで)、削除、起動・停止、Snapshot の取得、OVF のインポート・エクスポートはサポートされます。
ESXi として標準スイッチ (vSS) を利用した NIC チーミング、外部ストレージのマウンドなどはサポートされます。
PowerCLI や REST など API での仮想マシン操作などは非サポートなので要注意。
利用規約
EULA (End User License Agreement) は ESXi の以下で確認できます。
/usr/lib/vmware/weasel/EULA
内容は非常に長いテキストなので割愛しますが、公開された Web 上では以下の Broadcom の契約ドキュメントサイトに掲載されたものとおそらく同一です。
- End User Agreement (Foundation Agreement and Modules)
- https://jp.broadcom.com/company/legal/licensing
製品ごとの細かいライセンス仕様については SPD (Product Specific Documentation) に記載があるのですが、vSphere Hypervisor としてのカテゴリは現状無いようです。
Workstation Pro や Fusion Pro は VMware Desktop Hypervisor Pro として SPD があるので、これに準拠するのか? 情報が追加されたら追ってここにも記載します。
- SPD : VMware Desktop Hypervisor Pro
- https://support.broadcom.com/web/ecx/support-content-notification/-/external/content/LegalNotices/VMware-Desktop-Hypervisor-Pro-SPD/24367